1925年、シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表している。またエドワード・リアやサミュエル・ベケットらの作品の挿画、劇場の舞台美術なども手がけた。幻想的な作風とアナグラムを用いた(Ogdred Wearyなど)ペン・ネームを使い分けてたくさんの私家版を出版したために、多くの熱狂的コレクターを生みだした。2000年4月15日、心臓発作のため死去。享年75歳。日本では2000年10月から柴田元幸訳で邦訳が刊行。大絶賛される。
今回はゴーリーの作品集の中で個人的なお勧めを紹介したいと思います。
<ギャシュリークラムのちびっ子たち>
子どもたちが恐ろしい運命に出会うさまをアルファベッドの走馬灯にのせて独自の線画で描いたゴーリーの代表作。
A~Zまで軽快な韻を踏んだ文章と共に子供たちが亡くなっていきます。残酷で奇妙な物語とモノクロの線画の上品で暗い雰囲気が魅力的でした。大人の絵本に興味はなかったのですが、丸尾末広さんの新ナショナルキッドに金の手帳(古賀次郎著)という作品があるんですが、それに似ているのをネットで知り、手に入れましたが大当たりでした。
<うろんな客>
カギ鼻頭のヘンな生き物がやってきたのはヴィクトリア朝の館。とある一家の生活の中に突然は入り込んできてそして、それから……。
奇妙な生物は突然現れ、自由気ままに行動し迷惑をかけるのだが、この一家は何故か追い出すつもりがない。柴田元幸さんのあとがきを見てもう一度読んでみるとわかるかもしれない、一度に二度美味しい作品になっています。本当にゴーリーがこんな風に考えて描いていたのか疑問ですが、考えなくもないような何とも奇妙な一冊です。キャラクターのデザインも素晴らしく、残酷な話が苦手だけど読んでみたいゴーリー初心者にうってつけの一冊です。
<不幸な子供>
トレードマークの微細な線画で圧倒的な背景を描き込み、一人の少女の不幸を悪趣味すれすれまでに描いた傑作。
この作品はゴーリー共通の独特な特徴から外れて、比較的王道な作品で気に入っています。ゴーリーの作品は変わったものとして心に残るものが多いですが、少女がどんどんと不幸になっていき、読んでいると純粋に心が痛くなります。ゴーリーにもちょっと人間的なところ(人間だから人間的というのは当たり前なのですが)があったのかなと思ってしまいますが、客観的に見て一人の登場人物をどうしようもなく不幸にしていくという試みは面白そうで、人に同情させるためでなく、ただ純粋に面白いものが描きたかっただけかもしれません、謎ですね(笑)。
<敬虔な幼子>
あまりに純粋で清らかな魂が汚れたこの世から昇天するまでを独自の手法で描いた傑作。
作品の中から引用しますが、「三歳になって間もなく、ヘンリー・クランプ坊やは、自分の心が邪であること、にもかかわらず神様は彼を愛し給うことを知りました。」と描かれており、このわずか三歳でキリスト教?に目覚める坊やの話です。最初のページの時点で面白く、これからどういった生活を送って成長し、どんな最後を迎えるのか気になってくると思います。グロテスクな要素はありませんが、その不思議な話からゴーリー中級者向けな気がします。
以上で個人的なお勧めの紹介でした。実はまだ呼んでいない作品もあるんですが、現在金銭的に難しく先になりそうです。また、ここで紹介されていないゴーリー作品のどれも面白いので、興味のある方は是非手にとって読んで欲しいですね。今回紹介した作品は気に入っているのもあるんですが、他のゴーリーの作品は難解で理解できていないというところも大きかったかなと個人的な反省点があります。他のゴーリー作品が好きでこんなところが良いよとコメント貰えると、その作品の持つ新たな魅力に気がつけるのでありがたいですね(他力本願)。勿論、作品が手に入ったら何度も読み理解する努力はするつもりですよ(笑)。
<おぞましい二人>
ゴーリー最大の問題作?
と言われているほど、普通の人から見ればかなり悪趣味な絵本です。子供を狙う二人の殺人鬼カップルの誕生から終わりまでを描いた作品で、出版して悪い意味で反響を呼びました。特に印象に残るシーンは子供を殺した後に食べる朝食のシーンで、人を特に子供を殺した後なのにどうしてご飯を食べられる!? と普通の人なら驚いてその殺人鬼たちの異常性に気づき怖くなると思います。ゴーリー自身はただ悪趣味なものを描きたかったわけではなく、現実に起こった陰惨な事件(ムーアーズ殺人事件)に動揺し、事件を理解しようと資料を読みあさった結果、生まれた作品だそうです。「もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と自ら言うゴーリーにとって、フィクションである本の中のことが現実に起こって心底驚愕したに違いないです。自作のうちで「どうしても描かずにいられなかった」と言っています。
ではでは。
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